【レポート】エルメス財団主催「スキル・アカデミー」ラップアップイベント

2022年5月29日、「スキル・アカデミー」のラップアップイベントが開催されました!🏇🌲

スキル・アカデミーとは、エルメス財団 が企画・開催する社会貢献プログラムの一つです。
その最大の特徴は、自然素材に光を当て、素材に関わるスキル(=職人技術や手わざ)の伝承、拡張、普及を目指すところにあります。
フランスでは2014年から実施されてきたそうですが、日本での開催は今年が初めてでした(当初は昨年の予定がコロナで延期)。

今回取り上げられた素材は"木"。

今年3月下旬に『中高生向けのワークショップ「木に学ぶ、五感で考える Wood-Life Learning」』が開催され、木版画作家、香り研究家、盆栽職人など木にまつわるさまざまなアーティストの方々による多彩な講座が行われました。

そのなかで私は、自然素材から"音"を生み出して楽しむ人たち「東京楽竹団」として、プログラムB「丸太と音楽」の講師を東京・森と市庭さんと協働で担当。

おくたまの森を観察、1本の木を切り倒しその泣き声に耳を傾け、人の手によって木や竹から生み出される音を聴き、みんなであれこれ叩いて音の実験、演奏をするというワークをし、大変有意義な体験となりました。

ラップアップイベントは、スキルアカデミーに参加した講師や中高生、教育関係者が一堂に会して、銀座メゾンエルメスで行われました。
まずは、「観察すること」「愛でること」「表現すること」についてディスカッション。
みなさんはこれらについて、どんな関係があると思いますか?

講座に参加した一人ひとりが、それぞれに感じたこと、その体験を持ち帰ってその後の生活の中で考えたことなどを言葉にしていて、それらをみんなで共有することは、とても豊かでした。
体験したその場だけで完結させず、その人の生活や人生に少しでもポジティブに作用すれば、素敵なことだと思います。
私も、そんな良い体験ができたひとりです。

そして、楽竹団はこの日のイベントのために30分のコンサートをしました。
プログラム(構成)は、私のアイディアを団長の橘さんへどうでしょう!と提案し、意見をもらい、より良い形にアレンジしてもらってできあがったものです。

1曲目は「おくたま」
おくたまの森で聴いた音、見た景色、感じた空気などを音で表現。みんなようこそ〜と森へ誘います。
そこ(おくたま)に実際に居た人も、居なかった人も、その場にはいました。お客さまにも、演奏者にも!けれど、音と想像力があれば、思い出を擬似体験できる。

旅行だってできる!ということで、「バリ」へトリップ✈︎
せせらぎ、風、鳥の声、人が何かを作る音、話し声などの音が、だんだんと音楽に...。
音楽がエスカレートして、感情が頂点に達し弾けたところで、ギコギコギコとノコギリの音。

橘さんがとってもシンプルな竹楽器「トガトン」を作ります。長い竹を、節をひとつだけ残して切ったらできあがり!
それを授かった私たちは、お客さんたちの真ん中にある切り株のちいさなステージで音あそびを始めました。
そのとき初めて聴く音なので、私たち自身もどんな音がするのかドキドキ...。リハーサルのときは、すごく不安になるようなハーモニーだったのですが(笑)、本番はもう少し平和で安心しました。
遊びでもあり、秘密の儀式のようでもあり、それをみんながじーっと覗き込んでいました。

遊びは終わらず、続いては音でキャッチボール⚾︎
みなさん受け取って、いろんな方法で投げ返してくれました!
さまざまなやりとりがあってから、3人が片手に1音ずつ計2音の手マリンバをもち、全身使って6音で、演奏&パフォーマンス。
途中で「あんたがたどこさ」のフレーズも登場。
これは「手まり唄」と言う、楽竹団のレパートリーの中でも人気の高い曲(演目)です。

このあとは舞台を少し転換し、曲らしい曲を演奏。
私のお気に入りの「マウイマリンバ」という楽器もいよいよ登場♪
竹マリンバ、アンクルン、マウイで日本の遊び歌「ずいずいずっころばし」
これまでに同じメンバーで何回か演奏しているのですが、今回は特に「お茶碗かいたの だあれ!」で結果がわかるまでのドキドキ感を音楽で表現できるように工夫しました。

そして最後は日本のテクノポップユニットPerfumeの「GLITTER」
キラキラギラギラした都会の輝き🏙
竹からは連想されない シンセサイザー のような電子的な音色をもつ竹楽器との相性抜群◎

汗を流し息を切らして弾ききったところで、「竹べら」というただ竹を割っただけの楽器の音がカンカンカンと鳴り響きます。
そこにメンバーが順に重なってゆき、「ケチャ」のリズムに(まさかの再びのバリ⁈)
楽器も音楽も大きく広がったあとは、ただ竹を打つ、という素朴な原点に戻りたくなります。

おくたまの森でもみんなで考えた、「音」と「音楽」のちがいについて、その疑問はより一層深まったか、それとも解決したかはわかりませんが、きっと音、音楽の味わい方になにか変化があったことでしょう(って信じてます)!

おくたまの森と、大都会銀座がつながった空間でした。
違うけど同じということが伝わっていれば幸いです。

今回いっしょに演奏してもらったメンバーの三宅まどかさん、丸田菜穂さんも、快く、ご自身の遊び心も入れて共につくってくださり嬉しかったです!
そして素敵な機会をくださったエルメス財団さん、特にお世話になった たなべひろこさん、いろんな大人がいることを示してくださった講師の皆さま、熱心な参加者の皆さま、ありがとうございました!

今回のような、互いに受け取りあえて、与えあえる場、いろんな考え方や感性があっていい!
実際に、そういういろんな大人が同じ空間にいる、というのがとても尊いことだと思いました。

どこでもそうだったらいいのにな〜