【レポート】エルメス財団主催スキル・アカデミー「木に学ぶ、五感で考える」丸太と音楽
前日の雨で澄んだ空気に、午後はお日様も出て、野外活動日和な好天でした。
朝からしっとりとした森へ入ってスーハーしながら進み、広場の"ステージ"に楽器をセッティング。
奥多摩唯一の製材所「東京・森と市庭」さんが準備してくださった、個性豊かな丸太や枝のバチを触り、手に取り、叩きながら、これがいい、あれもいい、これを切ろうと相談して選ぶ時間も、とても楽しかった。
素晴らしいロケーションで、楽器たちもいつも以上に堂々として見えます。
今回のために作っていただいた美しい丸太用スタンドにお気に入りをぶら下げて、広場を囲い向き合うように設置。
一発叩くだけで、木々や山々に反響して響き渡る音が清々しく、幸福感。
いつもどれだけ響きを抑えられた空間で、限られた成分の音だけを聴いているか(そして耳へのダメージ)を思い知らされます。
スキルアカデミー前半は、五十嵐正雄さんによる森林ツアー&間伐体験
70年ものの大木1本が198円(高級めなおにぎり1個)にしかならないと聞いてびっくり。
枝をこまめに落とさないと節が増えすぎて死節(穴になってしまう)が発生してしまい、そうすると木材としては価値が下がるなど、厳しい現実も知りました。
どうやって新たな価値を見出すか、山や木々を守りつつ生かす方法を、これからの若い世代に一緒に考えて欲しい、と中高生に語りかける五十嵐さん。
木を切り倒すところを初めて生で見ましたが、倒れるときに「キューー」と泣くのですね。
大きいのに、かわいい声で、なんだか急に可哀想になる。。
林業において、危険を察知する意味でも「音」はとても重要とのことで、音は繊細に物事の状態・状況を伝えてくれて、人間はそれを生かしてきたということにも、"スキル"を感じました。
お昼休憩を挟み、後半は楽竹団によるレクチャー
今回は「素材から音を引き出す」ことをテーマとし、木や竹から、どんな工夫をして音を生み出しているか、それをどうやって音楽にしていくかを、中高生のみんなといっしょに考えました。
今回は音程のたくさんある楽器(竹マリンバ、アンクルンなど)はあえて使わずに、シンプルな楽器を使って演奏しました。
まずは、いつもは竹の太鼓スリッタムで演奏する「ジュラ紀」というオリジナル曲を、それぞれに異なる"丸太"を使って4人で演奏。参加者には移動しながら好きな位置で聴いてもらいました。
続いて、竹筒の表面に一箇所穴を開け、そこにビニール袋を貼り付けたものを切り株にトントン押して鳴らす「スタンプ」という楽器で演奏するオリジナル曲「竹の大地」。
スタンプのビリビリ音がたまらんのです。
ながーい竹筒の穴を平べったいバチで叩いて鳴らす「スーパーマウイ」の低音も魅力的。
それから、短めの竹筒に切り込みを2つ入れて響かせる「手マリンバ」(これを音程揃えて並べたものが竹マリンバ)を両手に一個ずつ持ち、3人で音をボールのように投げ合ったり、計6音でメロディーのようなものをつくったりして遊ぶパフォーマンスを。
それぞれに、その楽器が出来るまでの背景や仕組みなどを、我らが団長 橘さんが解説。参加者みなさんとても熱心で、鋭い質問も出ていました。
みんなにも色々な楽器に触れて音を出してもらった後は、3つのグループに分かれて、それぞれの"音楽"をつくるワークを行いました。
グループによって選んだ音(楽器)、音楽の構成、雰囲気などさまざま。とてもユニークでした!
私が担当したチームの作品タイトルは「おはよう、またね」。学校にみんながだんだん集まってきて、色んなことが起きて、またね、と言ってそれぞれの場所へ帰ってゆく、というのを表現するのはどうか?と提案してくれました。
「もう少し事件が欲しい」とか、「こう終わりたい!」などの意見を出し合ってくれたり、「楽竹団の演奏を見ていてアイコンタクトが大事だと思ったから自分達も意識したい」などと言ってくれたり、いろいろ考えて、見て、聴いてくれていることに感心しました。
一番最後は全員で10分間、音を鳴らしました。いろんな場所で音によるコミュニケーションが自然に生まれ、いろんなものを鳴らして実験している子もいて、最後まで飽きずに演奏しているのが印象的でした。
鳥の声も参加してくれて、あの日、あの場でしか聴けない、感じられない音楽を味わえて贅沢なひとときでした。
友人たなべひろこさんとのご縁で、こんな魅力的な企画に携わらせてもらい、
五十嵐さんをはじめとする森と市庭の皆さん、奥多摩の森と出会い、
楽竹団団長 橘さんの"スキル"で充実した内容につくりあげていただき、
メンバーの入野さん、木下さんの"スキル"も加わってさらに豊かになり、
参加者の皆さんにも恵まれて、素晴らしい体験が出来たこと幸せに思います。
一度延期になったこともあり準備期間が長かったので、終わってしまい少し寂しさも..。
この企画、大人からの需要(欲求?!)も多いように感じているので、またなにか実現できたらと考えています!