【レポート】2026年2月28日(土)・3月1日(日) 石牟礼道子作 音楽詩劇『緑亜紀の蝶』ー自分にきかせる童話

伝統芸能と現代演劇をつなぐ演劇活動を続けていらっしゃる劇作家・演出家・能楽プロデューサーの笠井賢一さんを中心によって設立された「アトリエ花習」さんによる舞台に「打ち物」で初参加しました。
石牟礼道子氏の作品を音楽詩劇、能舞として、南青山にある能楽堂「銕仙会能楽研修所」にて上演するというもので、私が出演した「緑亜紀の蝶」という作品は2020年に初演され、今回は2度目の再演でした。

「打ち物」という言葉に表現されているとおり、いわゆる"打楽器"だけでなく、音具や素材的なものを使って音を紡ぎ、演劇作品の一端を担います。
まさに、そうした素材から音を生み出す匠である橘政愛さんより、ありがたいことに後継者として抜擢していただき、今回の出演が決まりました。

橘さんとの出会いは、日本の竹で楽器をつくり奏でる音楽グループ「東京楽竹団(とうきょうらくたけだん)」です。楽竹団の創設者で長年代表を務められた橘さんからは、その活動の中で、竹の扱い方や竹楽器のつくり方・直し方、演奏についてご指導いただいたのはもちろんのこと、それ以上に(?)、"表現とはなにか"についてを教えていただいてきたように感じています。
2019年、橘さんが66歳のとき開催された単独コンサートにも出演の機会をいただき、その際にはより一層、"音による表現""舞台づくり"を間近で学びました。
また、語りとのコラボレーションなどの活動も興味深く、公演を拝見していました。
こうしたさまざまな場面で、"演奏家"としてだけでなく、"演出家"としての側面からも影響を受けてきました。

そんな橘さんが今回の舞台からは引退(?!)されるとのことで、バトンが渡されました。
橘さんが長年大切にかわいがってきた、たくさんの、本当にたくさんの素晴らしい音具たちをお譲りいただき...
貴重な音の数々に素直にとても嬉しい気持ちと、はたして私でいいのか?という重圧と...
仲良くなって、しっかりつないでいかねばと思っています。

打ち物については楽譜があるわけではありませんが、初演での橘さんの演奏を引き継ぐという形で、台本や記録映像を参考にしながら取り組みました。
橘さんが演出家の笠井さんとともに培われてきた演劇作品における演奏の手法や向き合い方についても、マンツーマンのレッスンで直接教えていただき、貴重な機会でした。
演奏面以外でも、事前にさまざまなことを細やかに共有してくださり、楽器運搬へのお気遣いやご協力まで...本当にご丁寧に引き継いでいただきました。

楽譜がない中で、扱う音具も、演奏(表現)も、自分のものではないという新しい難しさもありましたが、今回それを伝授していただき、やってみたことで、自分の視野が広がったように思います。
ある意味では、私も俳優さんのような気持ちで、橘さんにはなれないけれど、"緑亜紀の蝶の打ち物役"を自分なりに探究し、表現したというような感触です。
私が好きな楽器であるカリンバが登場する場面もあり、そこでは私のお気に入りのカリンバで、自分の即興演奏も取り入れさせていただきました。
また、再演にあたって作曲の佐藤岳晶さんから新たなリクエストも多数いただき、やりがいがありました。
稽古を重ねるなかで、いろいろトライしつつブラッシュアップされてゆく過程は、とても楽しいものでした。

佐藤さんが石牟礼さんの詩をもとに作られた楽曲がどれも素晴らしく、スッと身体に浸透するような、気づくと口ずさんでいるような音楽で、そこに私も音で参加できたことを嬉しく思っています。
特に「空と海と・・・」の美しさたるや..."夢見神"の新井純さんの力強い歌唱に心が震えます。
そして尺八や能管、口琴まで!さまざまな吹き物を演奏される設楽瞬山さんの音も多彩で、今回初めて知ったオークラウロという楽器の温かな音色がとても好きになりました。笛の音は、その空間の温度や時の流れが変わる感じがします。
冒頭部分の短い時間ではありましたが、琵琶の岩佐鶴丈さんとご一緒出来たことも、とても嬉しかったです。琵琶の神秘的で説得力のある音色は唯一無二唯で魅力的です。

俳優の皆様の姿や表現、また稽古中の笠井さんからのお言葉からも、学ぶことが本当に多く、たくさん刺激をいただきました。
自分の言葉ではないセリフを自分のなかに入れて(覚えて)、歌も覚えて、立ち位置や動きや振りも覚えて...それだけでも大変そうなのに、さらに表現として伝わるレベルにまで高めるなんて...すごいです。
手段こそちがえど、目指していることは、俳優さんも演奏家も同じだと思いました。
そして照明さんや音響さん、舞台監督の島本さんは天蓋の設置や動きを操ることもされていて、そうしたすべてが作用し合いながら、相乗効果も生まれ、ひとつの舞台がつくられることに喜びを感じました。
積み重ねてきたからこその緊張感、そしてナマモノであり今までと同じはあり得ないという緊張感。その両方があるのが、ワクワク、ヒリヒリして楽しかったです。
熟練された皆様の胸を借りて取り組むことができ、ありがたい、幸せな現場でした。

ご来場いただいた皆様、ありがとうございました!
そしてお世話になった皆様と、このご縁に感謝しております🙏