【レポート】2026年10月10日(土) 音楽祝祭劇「神々の物語」あまてらす~古事記より~

若村麻由美の劇世界
音楽祝祭劇「神々の物語」あまてらす~古事記より~
無事終演!
ご来場いただいた皆様、共に舞台をつくりあげた出演者、スタッフ、お世話になったすべての皆様、ありがとうございました。
さまざまな意味で奇跡のような、この一夜限りの舞台で、一生のうちに、このような機会を得られたことに深く感謝しています。
〜一部レポートでもあり、途中からもはや日記です〜
いつか訪れたいと思っていた地、熊野。
和歌山県田辺市にある熊野本宮大社で開催されている「八咫の火祭り」とあわせて、かつて本宮大社のあった大斎原(おおゆのはら)に特設された舞台で演劇を奉納上演するという企画に、演奏で参加しました。
主演は若村麻由美さん、演出は笠井賢一さん。
今年3月、ご縁があって笠井さん率いる「アトリエ花習」の演劇作品に初めて出演することとなり、そこから繋がって今回のオファーをいただきました。
肩書きも「演奏家」ではなく「楽師」、「パーカッション」や「打楽器」ではなく「打ち物」と表現されるように、
コンサートにおける演奏とは、作り方も表現方法もまったく異なり、刺激的なことばかり。
作曲家の佐藤岳晶さんは、笠井さんからの信頼厚く演劇作品での音楽のご経験も豊富で、今回新たにできあがってきた台本をもとに、どこにどんな音・音楽が入ると効果的かをディレクションしてくださいました。
音でこういう演出ができるのかと、学ぶことがたくさんあります。
前回の「緑亜紀の蝶」の音楽も素敵で、今回はどのように表現されるのだろうと楽しみにしていたのですが、神楽や雅楽といった伝統音楽を現代のまなざしでアレンジされていて、
笙の響きとパイプオルガンの響きがオーバーラップするなど、遺伝子レベルでの馴染みはありつつも、新鮮な音楽でした。
私と同じように日本の伝統音楽が身近ではない人にとっても、耳ざわりよく、物語に寄り添って自然と身体に入ってくるような音楽だったと思います。
使った打楽器も、例えば「笏拍子」という楽器を私は持っていないので、「ムチ」で代用するなど、ほとんどが西洋打楽器です。
音色を少しでも"本物"に近づけるために楽器のチューニングや演奏方法を工夫をしながら、
そして今回は野外公演でPAも入るため、音響の渡辺裕紀さん、須能愛さんにもお力を貸していただきながらの音づくりでした。
私にとって新しい音の世界にふれることとなり、佐藤さん(はシンセサイザーでさまざまな音を奏でます)と設楽瞬山さん(多様な"吹きもの"を演奏されます)とともに音を出しながらのクリエイションは楽しく、勉強になりました。

音楽だけでのリハーサルを経て、俳優さんとの稽古へ。
「古事記」の物語が、お客様によりわかりやすく、より豊かに伝わるよう、俳優さん同士で活発に議論が交わされブラッシュアップされてゆきました。
これにより台本はどんどん変わってゆき、楽師も常にそれに対応せねばなりません。
これで決定!ということがなかなか(ほとんど?)なく、ハプニング的なことも起こるため、柔軟性や瞬発力が求められます。
そして今回は、ほとんど常に何かしらを演奏し続けている状態だったので(休みがない)、自分のなかの段取りも非常に重要で、目も耳も頭も終始フル回転、大忙しでした。
(右手で鈴を振った後、余計な音が鳴らないよう丁寧に置きつつ、左手に持っておいたバチで太鼓を叩き、隙を狙ってバチを両手に持って太鼓をロール(連打)し、それをくるりと裏返して硬い方でシンバルを鳴らし...など)
間が悪くなってしまうなど、うまくいかないときもあって悔しかったり、反対にうまくはまって表現が高まり嬉しくなったり、難しくて楽しいです。
古事記のイザナギとイザナミの話や、天の岩戸隠れの大体のあらすじは知っていましたが、俳優さんによって台本が読み砕かれてゆき、私も何度も聴いているうちに理解が進んできて、言葉こそやや難しくとも、かなりお茶目で面白いんだと、イメージが変わりました。
神様たちのお話しだけど、なんだかとても人間味があるというか...。
8日から熊野入り。
6:30羽田集合にみんなで怯えながらも(笑)欠けることなく無事集まり、いざ飛行機で南紀白浜まで約50分。あっという間に着きますが、熊野本宮大社まではここから車で1時間半ほどです。
そしてなんともありがたいことに、舞台監督の島本さんが最近ゲットしたトラックに、私の楽器を含む諸々の機材を積み込み、運んでくださいました。その距離およそ560km!
俳優の茅根さんも同乗され、おふたりでの運転。過酷な車移動を引き受けていただき、大変感謝です。
着いたらすぐに、九鬼宮司へご挨拶。お話を伺ったのち、正式参拝をしました。
儀式の中で、自分の名前も読んでいただき、びっくり。かしこみかしこみ。
その後しばし待ち時間があったので、さっそく御朱印とお守りもいただきました!(ご朱印帳忘れなかったの我ながらファインプレー)
「ひじり紐」という素敵なブレスレットがあって、色によって効能(?)がちがうのですが、「神々の物語」上演に向けてあやかるべく、紫色の「神性と開放」を選びました。俳優の金子あいさんも同じものを選ばれ、お揃いに♪

その後、「瑞鳳殿」という建物(洗練されたデザインだった)に歩いて移動し、昼食と機材搬入。雨天の場合はここが会場となる予定。
そして稽古の前に、晴れの場合の会場である おおゆのはら(野外)を下見。広〜いのですが、とっても静かで心落ち着きます。
日本一高い鳥居も見ることができ、あまりのスケールの大きさに驚きました。周りが田んぼなのもまた、独特で良い雰囲気です。
空気がゆったりと、まろやかな感じがしました。
瑞鳳殿で夜遅くまで稽古し(とても響きの良い空間)、宿へ。
演者とスタッフあわせて総勢17人!の合宿生活が始まりました。
台所やリビング、小部屋が複数あるゲストハウスに寝泊まりし、スタッフの方々が夕食や夜食を手づくりしてくださって、おいしくて、温かく...とてもありがたかったです。
(カレーの日、最初から うどんorライスを選べるシステムだったことに非常に感激しました!)

2日目は楽師は午前中フリータイムとなり、朝俳優陣とともに おおゆのはらまでは車で送ってもらったのち、ひとりで散策。
熊野本宮大社へ向けて歩き、正面入口を通って石の階段も登り(ぜーはー)、本宮にお参りしました。
天照大御神の祀られている建物の屋根の金色部分が太陽に照らされ眩く光り輝いていて、なんだかエネルギーを感じ...ありがたかったです。
近くを流れる川の水もとてもきれいで、透明度が高く、エメラルドグリーンみたいな色に見えるところもあり。青空も美しく、山々も青々として、最高の景色でした。
毎日あまりにも良い天気で、本当に恵まれていました。天照のパワーとしか思えません!
瑞鳳殿へもどり昼食をとったのち楽器搬出。
みなさんのお力もお借りして、バケツリレーで運び出しました。(こういう時間がけっこう好き)
おおゆのはらで、セッティング。
周りの木々たちによる天然リバーブがすごくて、楽器の響きが心地よかったです!
暑くも寒くもなく、風も静かで、樹木のいい香りもする、格別な癒し空間。
積み込みのときなど、かなり日差しも出ていて暑さが心配だったのですが、おおゆのはらの楽師エリアはちょうど日陰になってくれていて、ずっといても疲れない快適さでした。
マイクを立てていただき、サウンドチェック。
夕方からは照明の確認や場当たりをしながらの稽古。
そしてなんと、野外で夜露もあるため、一度すべて撤収!(そんな〜〜)楽器は一旦トラックの荷台に積ませてもらうことに。
宿への帰り道、途中で車を停めていただいて空を見上げると、ものすごい星の数!
天の川というものを生まれて初めて見ました。
あまりの素晴らしさに感動し、自然と涙が...忘れられない思い出です。
宿に戻ってからは少しお酒も飲みながら、みなさんとおしゃべり。
特に俳優の時田光洋さんと、いろんなお話ができて、まさかの繋がりもあり嬉しかったです。
さまざまな分野の経験豊富な大人のみなさんとの会話は学ぶことが多く、
良いことも悪いことも、いろいろと考えさせられました。(内容はここには書けないけれど!)
本番当日、楽師は昼過ぎに現場入りとなり、ふたたびうれしいフリータイム。
ずっと入りたいと思って遠くから眺めていた川に足だけ入りました。
ちっちゃい魚もたくさん!石が大きめで足ツボマッサージ状態。プチ禊ぎ。

午後になって、きのうを踏まえて楽器やマイクをセッティング。
当日はなんとゲネプロなし!前日も時間がなくなりゲネプロ(通し)はできなかったので、現場で通すのは実質本番が初めてでした。
夕方より、八咫の火祭りがスタート。
まずは本宮から おおゆのはらに向かって時代行列がはじまります。
法螺貝の音とともに、平安装束に身を包む女性や火の灯されたお神輿を担ぐ男性が一列でゆっくりと歩いて、大鳥居をくぐり、神様の前に到着。
私もその景色を俯瞰して見るべく河川敷のほうへ行ったり、行列について行ってみたり。(けっこうゆるくて、みんなついて行ってた)
神事が行われたあと、すぐ向かいで奥熊野太鼓の演奏。
大太鼓は音程感がはっきりあって、まるでベースのメロディのように聞こえて面白かった。
途中ではあったものの、そろそろ出番なので楽師席のほうへスタンバイ。
太鼓に耳を向けつつストレッチしたり、集中モード。
ここからがいよいよ一連の流れで、奉納上演に向けた神事が執り行われたのち、九鬼宮司による「熊野舞」。
"踊り"とはひとあじちがう、独特な振りだなあと思っていたら、パントマイムの方が振りつけされたというお話を翌日伺い、なるほど〜となりました。
清められた舞台で、宮司から若村さんが榊を受け取り、「神々の物語」がスタート。
この辺りから演奏が始まります。
たくさんの人がその場にいるのに、鈴虫の鳴き声が耳につくくらいの静けさのなか、場のエネルギー、そして本番ならではのエネルギーを俳優の皆さんからもひしひしと感じました。
この一度きりの舞台を最善のものにしたいという強い想いで、全員がひとつになっていたと思います。
楽師席からは すぐそばで俳優さんたちの表情や熱量を感じ取ることができ、贅沢だなあと思いながら演奏していました。
その景色を、しっかりと目に焼き付けることができました。
終演後、ある小学5年生の男の子が親御さんとともに楽器のところへ来てくれました。
1年生のときから和太鼓をやっていて、今日運動会でも叩いてきたとのこと。私の使っていた楽器にも興味をもったようで、いろいろ質問をしてくれたり、やさしく鳴らしたり。扱いが丁寧で、楽器を大事にしてくれていることが伝わるさわり方でした。
ほかにも、音楽に感動しました!と声をかけてくださるお客様もいらして、とても嬉しかったです。
そうしてお話しをしているうちに、花火がスタート!
その場からも見ることができ、迫力ありましたが、木が重なって見えづらい部分も多かったので、やはりクライマックスはちゃんと全体を見たい!と思い、その男の子とともに川のほうへ向かってダッシュ!!(真っ暗闇なのでかなり危険!笑)
ふたりで芝生に腰をおろして、静かに眺めました。
残響がものすごく、街全体が揺れるんじゃないかというくらいの轟。
その音と光の華やかさに感動しながら、祭りは終了。

男の子ファミリーとはお別れして、急いで撤収作業。ここからが大仕事です。
みんなで力を合わせて、すべてを撤収、積み込み。
私はトラックの荷台に乗って島本さんをサポート。微力ながら、こういうとき打楽器奏者はまあまあ役に立つことができます(笑)
もとの姿にもどった おおゆのはら。最後の照明機材を停止し、完全な真っ暗闇に。この日も星空がきれいでした。
しばらくみんなで眺めました。
迎えにきてくれた車で、宿へ。
打ち上げ!笑いすぎてお腹痛かった。。
気づいたら3時でした。。(途中2度、夢の中へ)
翌朝もみなさん普通に朝起きて荷造りをされていて、タフだなあと。(ずっと思っていたけど)
宿の前で追加の最終積み込みをして、島本さんと茅根さんとは一旦お別れ。
お礼を伝えに熊野本宮へ。2日前より石段を登るのがキツくなっていたのは気のせいではないはず...。
本殿にも改めて手を合わせ、九鬼宮司へご挨拶。
(この間、そしてその後も暮らした宿の後片付けをしてくださった方々もいて、感謝)

レンタカーに乗せてもらい、空港へ。
窓の外を眺めながら、もうすぐこの風景ともお別れか〜と少しさみしくなる。
空港でお土産を見たり、ラーメン食べたり。
無事保安検査も突破して搭乗。
一度帰宅したのち、島本さん&茅根さんトラックと都内で合流し、楽器や荷物を受け取ったのは21:30。
疲労が蓄積したうえでの長旅、大変お疲れ様でした。感謝してもしきれず。
その後まいまいカーで あいさんにお届け物をして、帰宅後楽器を片付けてミッションコンプリート!
参加したおひとりおひとりのお力と思いやりと、熊野という土地や神々のパワーと、すべてのおかげさまで、
無事、成功裏に終えられたこと、そしてこのご縁に心より感謝します。
もうすでに、熊野へ行きたいです。
・・・
若村麻由美の劇世界
音楽祝祭劇「神々の物語」あまてらす~古事記より~
◯主演:若村麻由美
◯出演:金子あい、茅根利安、時田光洋
◯音楽:佐藤岳晶(作曲・シンセサイザー)
設楽瞬山(吹きもの)
富田真以子(打ちもの)
◯舞台監督:島本和人
◯音響:渡辺裕紀(Hiro Sound)、須能愛
◯作・演出:笠井賢一
◯後援:和歌山県、テレビ和歌山、熊野本宮大社、熊野本宮観光協会
◯和歌山文化振興事業補助事業
◯主催:音楽祝祭劇 おぐりとてるて熊野本宮上演実行委員会




